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インタビュー

頭の中を書き出せば
1日は効率的に使える

ビジネスマンとして働くかたわら、好きが高じて、文房具の魅力を紹介するウェブマガジン『毎日、文房具。』の編集長として毎週2~3本の記事を書いている髙橋拓也さん。今では文房具&手帳アドバイザーとしても活躍する髙橋さんは、1日の時間をうまくやりくりすることで、会社員と編集長という2役をこなしています。その効率的な時間の使い方には、「書く」ことがとても大切な役割を果たしていました。
TEXT:綿谷禎子 PHOTO:山本亮 撮影協力:バレアリック飲食店

立ち上げから2年。大きく育った『毎日、文房具。』

文房具はどんな人にも身近なツールで、“毎日”、使わない日はありません。そんなことから、『毎日、文房具。』というタイトルでウェブマガジンを始めました。もともとは趣味の延長線で始めましたが、今ではTwitterとFacebookのフォロワーがそれぞれ1万人を越えています。月間ページビューも2016年9月に、ひとつの目標であった10万ページビューを達成するなど、“文房具に特化したメディア”としての認知度が高まってきたように思います。

スタートしてから約2年。想像していた以上に、『毎日、文房具。』の存在が大きなモノに育っているように感じます。例えば雑誌社や新聞社からの取材依頼が増えたこと。文房具メーカーからは、新商品のサンプルを送っていただいたりもするようになりました。さらに2016年2月には浦和 蔦谷書店で、8月には二子玉川 蔦屋家電で『毎日、文房具。セレクション』として厳選した文房具を展示・販売しました。昔から抱いていた、“文房具売り場をプロデュースする”という夢を叶えることができたんです。

書いて考えを整理することがゴールへの近道

文房具&手帳アドバイザーとしての活動が増えてきましたが、今の仕事も好きなので、あくまでも本業は会社員です。趣味の一貫である『毎日、文房具。』では、自分が使ってみて本当にいいものだけを紹介したいので、お金をもらって書くことはしていません。

だからよく人から「本業と趣味をどうやって両立しているの?」とたずねられますね。その問に対して僕は、「書くことで時間を効率化している」と答えています。

『毎日、文房具。』の記事は自宅で書いているのですが、どのような構成にするかや、どんなカットを撮影するかなど、さまざまな作業工程については、通勤時間や休憩時間などを使って、紙に書き出してまとめています。紹介する文房具の特徴を箇条書きにしたり、文房具のどの部分をどんな角度で撮影するかなど、イメージをいったん、紙に書き出しているんです。

構成を記入するときなどには、書き味がいい「エナージェル」を愛用。黒色だと沈んで見えるので、基本、青色で書くことが多いそう。

そうすることであーでもない、こーでもないと、文字を打っては消すことや、あれもこれもと多くのカットを撮影してしまう迷いがなくなりましたね。作業前に紙に書くことで、頭の中が整理されて見える化できるんです。手書きだとノートを開くだけとスピーディーなので、ちょっとしたすき間時間を利用して記事を構成。自宅ではその流れに沿って作業するだけなので、効率的に記事を作成することができています。

構成や作業工程などを書き出すときには、左上から右下に向かって書いていきます。だからノートは横書きの方眼スタイルが便利。そして最初に書き出すのは、何のためにこの作業を行うのか、そのゴールを考えることです。例えば『毎日、文房具。』の記事の場合なら、記事を書き上げることがゴールではなく、見てくれるユーザーにちゃんとよさを伝えられることがゴール。このことを最初に書いてから工程を考えることで、本末転倒になることも防いでいます。

朝から書きこむ「時間管理マトリクス」

この“頭の中を書き出す”という行為は、仕事の時にも行っています。僕の朝は仕事の優先順位が分かる「時間管理マトリクス」に、今、抱えているタスクを書きこむことから始まります。

時間管理マトリクスとは、横軸に緊急度、縦軸に重要度を記した4分割の領域のこと。一番重要なのは緊急度も重要度も高い第一領域(A)。その次が緊急度は低いものの重要度が高い第二領域(B)で、緊急度は高いものの重要度が低い第三領域(C)、緊急度も重要度も低い第四領域(D)と続きます。

朝一番に今日の仕事内容を確認し、定時までにいかに終えるかを計画。じっくり考えながらお気に入りの万年筆で、4つの領域にタスクを書き分けていきます。この時間はとても重要で、集中が途切れて字が乱れた時は書き直すほどなんです。タスクは“○○さんに電話”というレベルまで砕き、終わると赤ペンで消していくので、就業時にはメモが真っ赤になっています。

緊急度や重要度の高い第一領域にあるタスクを中心に、その日に行う仕事に順番を書きこみ、それぞれ何時までに終えるかを、時間管理しやすい週間バーチカル手帳に記入します。1つのタスクを所要時間まで考えてキチンと落としこむことで、その仕事だけに集中できます。そうやって就業時間内に効率的に仕事を行うことで、余暇に趣味の文房具の活動ができているんです。

こだわりの文房具が特別な感情をはぐくむ

毎朝のタスクの書き出しに利用するのは、お気に入りのプラチナ万年筆「3776 センチュリー」です。僕にとって万年筆は筆とボールペンの間にある存在。筆ほど厳かではないけれど、ボールペンほど手軽でもない。そんな万年筆だと、少し特別の気持ちで文字を書くことができるんです。書くことに集中できるし、気持ちも落ち着きます。それに文字がキレイに見えるところも気に入っています。

髙橋さんの祖父が生前使っていた万年筆で書くことも。今なお現役で活躍。

手帳やノートを書く時には、なめらかに書けるぺんてるのゲルインキボールペン「エナージェル」や新聞記者御用達の速記用シャーペン「プレスマン」を使います。そしてアイデアを書き出すために、さっとメモをする持ち歩きには「フィールドノート」、机上で落ち着いて書くときはEDiTの「アイデア用ノート」を使い分けています。

文房具には自分なりのこだわりがあるので、自分好みのアイテムが欲しいとつねづね思っていますね。“文房具売り場をプロデュースする”という夢は叶ったので、次は“オリジナルの文房具をつくる”という夢を実現したい。僕にとって文房具は“No stationery, No life.”と思える存在。これからもさまさまな活動で、文房具にたずさわりたいと思っています。

やわらかな1枚の革でできた土屋鞄製造所のロールペンケース。紐をほどくひと手間が「さあ、仕事を始めよう」と、やる気のスイッチになっている

自宅で愛用しているペン立て。外出時も自宅と同じ環境で書きたいので、持ち歩いている

Profile

髙橋拓也さん
『毎日、文房具。』編集長

IT系企業の会社員。中学生時代から文房具に興味を持ち、会社では機能性豊かな自分セレクトの文房具を使用。同僚からも文房具のこだわりには一目置かれている。もともとはFacebookページで書いていた文房具のレビュー『No stationery, No life.』を、2014年9月にウェブマガジン『毎日、文房具。』としてリニューアル。代表兼編集長を務めながら、数々の雑誌や新聞の文房具・手帳特集でもインタビューを受けるなど、文房具&手帳アドバイザーとしても活躍。

<毎日、文房具。>http://mai-bun.com/