夢を目標に変えるための<br>力を引き出すビジョンノート

夢を叶えるビジョンとプロセス
方眼ノートに詰め込んで

石津貴代さん / メンタルトレーナー(株式会社リエート代表取締役社長)

「心の筋トレで最高のパフォーマンスを発揮する力を手に入れる」。メンタルトレーニングにカウンセリングを取り入れた独自のメソッドでアスリートを中心に、ビジネスマンから小学生まで「結果を出したい人」に向けサポートをしている石津貴代さん。

クライアントとのセッション(カウンセリング)は「完全アナログ」という石津さんのノートとのおつきあい、手書きにこだわる理由とは。

TEXT : ごとうあいこ / PHOTO : 吉崎貴幸

ペンを片手に
聞き書きで面談

「クライアントのセッションをするときは、まず向かい合って座り、手書きで全部記録していきます」

そう言う石津さんの横には、ぎっしりと紙が詰まったファイルが積み上がり、クライアント1人1人とていねいに向き合う様子が見て取れるよう。

「お名前、職業、相談内容、今後のビジョンや目標設定などもすべて、クライアントの前で話しながら手書きしています。仕事を始めた頃から、ずっとこのスタイル。完全にアナログです」

クライアントのヒアリングファイルを前に話す石津貴代さん

ピンクはアスリート、ブルーとイエローはその他の職種とクライアント別にファイリングされたヒアリングシート

石津さんは現在、「目標に向かい結果を出したい人」たちのハイパフォーマンスを引き出すためのメンタル強化、“心の筋トレ”をする専門家・メンタルトレーナーとして活動しています。トップアスリートから経営者、ビジネスマン、アーティストなど個人はもちろん、実業団やスポーツチーム、企業などこれまで8,000名以上のトレーニングを担当。講習会やセミナーに加え、2019年の初春からスタートしたメンタルトレーナー養成講座の講師として全国を飛び回りながら、多忙な毎日を送っています。

ヒアリングしながら聞き取り内容を紙に書き出す

毎回、セッションは1枚の紙とシャープペンシルから始まる。「このヒアリングシートは、セッション後にコピーをしてご本人にお渡しします」

選手の声で
一念発起

「2016年に株式会社化したのですが、メンタルトレーナーとして活動し始めた頃は、まさか自分が会社を起こすなんて思っていませんでした。もう15、6年くらい前になるでしょうか。現在の仕事とは関係ない一般企業で事務員として働いていましたが、それと同時にコミュニティFMでラジオのパーソナリティーをしていたんです。そのときに、取材で野球選手や競技選手から悩み相談を受けたのが、メンタルトレーナーとなるきっかけでした」

もともとスポーツ観戦が好きだったという石津さん。2軍戦ではのびのびプレーして実力を発揮していた選手が、1軍に昇格してゲームになると結果が全く出なくなるという場面を何度も目の当たりにしたと言います。

インタビューに応える石津貴代さん

「“赤”は私を元気にする色で、勝負カラーなんです」と石津さん。靴やベルトなど赤を身に着けることが多いそう

「選手たちは、緊張で全く動けなくなったと悔しがっていました。選手から話を聞くうちに、精神力の強弱が実力発揮に影響することを痛烈に感じ、疑問に思ったんです。体は鍛えられるし、技術も磨けるのに、なぜメンタルだけは生まれ持ったままで頑張らなきゃいけないのかと。どうにかできないのかという歯がゆさが、私の中でわいてきたんですよね」

アテネ・北京で金メダルを獲った競泳の北島康介選手が専門のコーチをつけてメンタルトレーニングをしているというニュースを見たのは、ちょうどその頃。石津さんは、「これだ!」と思い、メンタルトレーニングの門戸を叩き、数々の日本代表選手を育成した師匠の下で3年半の座学と現場研修を開始。子どもから大人まで、スポーツ界を中心に経験を積んできました。

手書きで向き合い
メンタル強化

「最初は身近な人たちの役に立ちたいという思いで始めたことでしたが、やるうちに“人を支えるにはまず自分自身と向き合わないといけないんだ”ということに気づきました。修業中は自分を内省する機会が数多くあります。その中で、私自身も、自分がとても『あがり症』であったこと、それで昔から緊張による失敗でチャンスを生かせなかったこと、中途半端に終わって自信をなくし、自分に絶望したことなども思い出したりしたんです」

振り返れば、1軍の舞台で実力を発揮できなかった野球選手と同じような経験をし、同じように葛藤していた過去があったという石津さん。2019年に出版した著書『緊張をコントロールして最高の結果を出す技術』は、その経験があったからこそ生まれたものだったと話します。

『緊張をコントロールして最高の結果を出す技術』(すばる舎)

20189月に発売された『緊張をコントロールして最高の結果を出す技術』(すばる舎)を読んで、遠くは沖縄からセッションに訪れた人も

記録しながら
イメージトレーニング

「メンタルトレーニングを学んで自分の中に落とし込んでいくと、緊張が自分の中でクリアになるのを体感できます。この感覚をつかむと、どんな状況でも平常心で乗り切れるし、楽しめるようになるんです」

クライアントにその感覚をつかんでもらうのに、手書きすることも多いそう。

「たとえば、試合を控えた選手だったら、本番の流れを全部書くんです。前の日からこうやって、こういう気分で迎えて、というストーリーを細かく全部書き出していく。そこに映像をのせる『イメージリハーサル』をします。イメージリハーサルに限らず、アスリートはみんなあらゆることを手帳やノートに手書きしますし、私のトレーニングでは、記録する習慣がない方も取り入れるようにお願いしています」

メンタルトレーナーとして関わったチームのユニフォーム

スポーツチームの試合や遠征に同行することも多い石津さんは、現在、2020年の東京五輪候補選手(陸上・女子ラグビー)のメンタルトレーニングも担当

石津さん自身、手書きはメンタルを整えるのにとても有効だと感じていると言います。

「手書きだと、『自分が書いた』っていう実感が体の記憶として残るんです。タイプされた書類や資料も、印象としては残るけれど、『自分が残した』という感覚はどうしても薄くなります。手書き文字は心理状態も出るので、力強く書けるときと、力が入らないとき、小さい文字で書いてしまったときなど、そのときの心情やコンディションなども見て取れるんです」

石津さんのもとには、アスリートをサポートする関係者も多く集まる。「石津JAPAN」は精鋭たちが集まる勉強会の通称

ノートは重要なツール
トレーニングに活かす

ノートを使い、気づきがあれば書き留めてもらううちに、思考やマインドも整理されていく。ノートを見返すと、力になっていることがわかる。そういうことから「ノートをトレーニングツールとしても取り入れている」という石津さん。

「選手たち一人ひとり“書いて記録する”ことが身につくよう、とにかく書いてもらっています。その日の気分、今日頑張ったこと、1日の終わりに“今日の努力と成長を3つ以上書く”などは、トレーニング開始時から2カ月くらいはしっかりやってもらうんですよ。『こんなに文字書いたの久しぶり!』なんて声も上がりますが、皆さんからご好評いただいてます(笑)」

笑顔で話す石津貴代さん

理想や目標を書いて
みんなでシェア

石津さんのもとには、アスリートだけではなく、「目標達成したい人」が多くやってきます。2017年から、毎年1月に開催する「手帳講座」は、石津さんの講座の中でも1番人気というもの。きっかけは石津さん自身の手帳の使い方が多くのクライアントの興味を引き出したことでした。

「私は、2016年からこのEDiT手帳を使っていますが、年末年始、仕事始めの前日までに巻頭の『年間プランニングページ』の“年間ビジョン”と“月間イベント”のページに1年間の理想を書くんです。どういうふうになったらワクワクするか、期待とモチベーションがグッと上がるようなことをどんどん書き込んでいき、1年の目標を立てています。手帳講座ではそれを参加者全員でやって、シェアするんです」

石津さんが使う、2016年版からの歴代のEDiT手帳

「年間プランニングページ」でその年のイメージをしっかりつくってから1年をスタートすることにはまり、2016年からEDiT11ページ手帳を愛用

この「理想を書く」という部分を過去形で文字化するのが石津さん流。たとえば、セミナーの予定が決まると同時に“満員御礼!”と書き添えるなど、「こうなったらいい」と思うことを予定といっしょに書いてしまうのです。

「人間の体は想像力と密接につながっています。レモンや梅干しを食べて酸っぱそうにしている人を見ると、自分も唾液が出るように、実際に体験していなくても想像力で体が反応してしまう。つまり、イメージが明確にあるものには、私たちの体はとても動きやすくなるんです。逆にイメージが全く湧かないと、反応が遅れるし、どうしたらいいかわからない」

だからワクワクすることをしっかりイメージすると実現しようという力が働き、そこに向けて目標が定まってくる。「こういう感性や成功のイメージをつくって実行するということは、スポーツもビジネスも同じ」と石津さん。「イメージの積み重ねが自分を引っ張ることになる」と話します。

石津貴代さんの月間プランニングページ

ビジョンを書くときは周囲の雰囲気が重要。お気に入りのカフェやホテルなど、気分がよくなる場所を重視

ノートとふせんで
ビジョンを管理

手帳には理想や目標だけでなく、予定や日記なども書いているという石津さんですが、手帳とノートはきっちり使い分けているそう。

「手帳には、いま現在のことが中心。頭の中を整理したいときには、デイリーページを使います。結構ネガティブなこと、悩みや不安なども書くこともありますよ(笑)。一方で、ノートは未来のビジョンしか書きません。ハッピーな気分で、これからこうしていきたいとか、こういうことをつくりたいとか、残しておきたいものを書くと決めています」

EDiTの方眼ノートにビジョンを書き溜めている石津さん。見開きごとに、「3年後の自分の理想の生活」やイチロー選手の引退会見を見て書いたという「後悔などあるはずがない人生とは?」など、テーマを設け、ビジョンと実現するためにやることを書き出しています。

「右側にビジョンを箇条書きし、左側に達成するためのTO DOを出すのですが、ふせんを使っています。達成したTO DOは、ノートの後ろのページに移動します。そうやって、着手していないことを見える化します」

<「ビジョンノート」ポイント>

石津貴代さんの方眼ノートの使い方

ビジョンを具体的にイメージし、達成するためのTO DOと一緒に管理する石津さんの“ビジョンノート”。「TO DOのふせんを右側にすると裏が書きにくい」という理由から、ビジョンは右ページに直書き、TO DOふせんは左に固定し展開。

① タイトル欄は左に大テーマ、右に「実現のための行動リスト」を書く

② 「3年後の理想の生活とは?」というように自分への質問を書き出す

③ TO DOは、右側のビジョンをブレイクダウン。「仕事」「プライベート」「どちらにも分けられない」と仕分けし、ふせんで色別に管理。達成したものは、剥がして別の場所に貼る。ふせんの色を分けるとジャンル別の達成率も見えやすい

不安はノートで解消
「やれることはある」

自分の将来や、仕事について、不安に思うこともあるそう。けれど「このノートを見ると、まだまだやれることはあると気づける。不安な気持ちは行動が止まっているときに起こるから」という石津さん。「毎年、年末にその年頑張ったことを50個書き出していますが、このTO DOふせんの数を数えてもいいですよね」とにっこり。ノートに夢を描き、きっちりと目標設定して突き進む姿は、自信と希望に溢れていました。

プレゼントされたプロレス用のマスクを手に笑顔

クライアントから「石津さんのイメージで」と、プロ御用達の工房でつくったオリジナルマスクをいただいたという石津さんは、大のプロレス好きな一面も

石津貴代さんがEDiTの方眼ノートを持っているところ
石津貴代さん Takayo Ishizu
メンタルトレーナー / 株式会社リエート代表取締役社長 

ラジオパーソナリティとしてスポーツ番組を担当し、アスリートへの取材を行ったことがきっかけでメンタルトレーニングの重要性に気づき、トレーナー・浮世満里子氏に師事。2007年に独立、Lieto-Mental Conditioningを始動。現在はプロ野球やプロテニス、競輪や格闘技、陸上、ラグビーなどのトップ選手や、経営者や営業職などの多数のビジネスパーソンと個人契約。2018年9月に発売された『緊張をコントロールして最高の結果を出す技術』(すばる舎)を出版するなど、講演活動や企業研修等、幅広い分野で活動を行なっている。

web : lieto-mental.com