EDiT手帳をフル活用して 気づきやスキームもひとまとめ

EDiT手帳をフル活用して
気づきやスキームもひとまとめ

篠原幸子さん / ファシリテーター

11歳の男の子の母として、職業人として、一人の人間として、マルチタスクな日々を送る篠原幸子さん。京都に暮らす篠原さんは、さまざまな人や組織の生き方やあり方に寄り添い、「対話」を通した自己探求やビジョン実現のサポートをするファシリテーターとして活躍しています。

自他ともに認める手帳マニアであり、2011年のEDiT手帳発売時以来の愛用者でもある篠原さんに、手帳の使い方や働き方、そして人と社会に対する思いをお聞きしました。

TEXT : 福田容子 PHOTO:坂上彰啓

「待つ」「聴く」こと
対話の大切さ

かつては「人の話を遮ったり、“いや” “でも”と逆接で返したりしてしまう癖を自覚しながらも変えられず、いやだなと思って過ごしていた」という篠原さん。子どもが生まれて間もなく参加した京都市主催の市民会議で「対話」という考え方に出会い、「待つ」「聴く」の大事さを知って、ファシリテーションの世界に飛び込むことになりました。

京都市主催のその市民会議は、「京都市未来まちづくり100人委員会」という名前のとおり、100人以上の公募市民が集まる大規模なもの。ですが、多くの行政主催の会議とは異なり、そこでは主催者である京都市が議事を提示するのではなく、参加した市民自らが考えたいことや関心のある議題を提案し、チームをつくり、参加者同士の対話によって合意形成を図っていくという、全国的にも新しい運営方式が採用されていました。もちろん篠原さんには初めての体験です。

そこには「対話のエチケット」がありました。相手の話を遮らず、最後まで聴くこと、待つこと。

「対話ってすごい。このスキルをみんなが当たり前に使うようになったら、戦争とかきっとなくなる」。封建的な父のもとで育ち、強者の意見に牽引されるリーダーシップのあり方に違和感をもっていた篠原さんにとって、それは対人コミュニケーションの概念が革命的にひっくり返る大きな体験でした。

「対話」の可能性に希望を見出した篠原さんは、自らも対話の伝道者になりたいと考え、その委員会の運営をおこなっていた「NPO法人場とつながりラボ home’s vi(ホームズビー)」に参画します。そこでファシリテーターとして、まちづくりや企業の組織改革に取り組みはじめることになりました。

現在は、企業や団体から依頼を受けて、研修やワークショップによる組織改革を、企画、プロセス設計から現場運営、対話のナビゲーションまで、個人と組織がビジョンに向かうためのアクションをトータルでサポートしています。

ワークショップのファシリテーターをする篠原幸子さん

モットーは「安心安全の場づくりと、自分の他の人も尊重すること」。ワークショップでは一人ひとりの様子に目配りを欠かさない

初対面の人が
EDiT を持っていると
距離が縮まる

多くの人や企業に関わりながら、多忙で多様な日々をすごす篠原さんにとって、手帳は欠かせない相棒です。「まず、大きさ、紙の厚さや風合いのよさ。さらに印刷面の色がシックで、黒はもちろんほかのペンの色も映えるところ、レイアウトに余計な装飾がないところ、プランニングページがあるところ。そして、カバーにポケットがあるところ......」と、篠原さんがEDiTを気に入っている理由を語り出したら止まりません。

「EDiTは何かあるとすぐに手に取るもの。もしも出かけるときに忘れると1日中落ち着かないですね。それに、打ち合わせなどで初対面の人がEDiTを持っていると、一気に距離が縮まる気がします(笑)」

“書く”という行為そのものが、「読み返して書いたときの感情、色や空気を思い出したり、丁寧さや集中力を生み出したりするために役立っている」という篠原さんにとって、EDiTは手帳という物を超えて、毎日の仕事や生活に寄り添い、当たり前の顔をしてそばにいる存在のようです。

ジッパー付きカバーのポケットには、ペンのカートリッジなどを常備

ジッパー付きカバーのポケットには、ペンのカートリッジなどを常備

デイリーページ : 名言や気づき、スキームなど、なんでもメモ

篠原幸子さんのEDiT 1日1ページ手帳 デイリーページ

① 誰かの発言、本や映画の中から覚えておきたいと思った言葉を書き留めている

② 気になっている案件の解決法やその参考になる仕組みなどをネット記事や本などから書き出して整理

③ コミュニケーションをスムースにするための講座などを担当することも。ファーストステップ(青)、セカンドステップ(赤)、NG ワード(紫)と色を分けて傾聴する際の流れや注意点をメモ

マンスリーページ:色分けとスタンプで、ひと月の活動を可視化

篠原幸子さんのEDiT 1日1ページ手帳 マンスリーページ

① 出張や移動の多い仕事。左端のメモ欄にはその週の移動予定をまとめて記入。電車やフライトの時間などが一目で見てとれる

② おにぎりマークのスタンプはオフィスワークの日、クローバーは自宅でリモートワークの日、特定クライアントの仕事、プライベートの用事など、仕事と生活の日常とハイライトを記号化

③ 仕事の種類、プライベートの活動ジャンルごとに文字を色分けすることで、その月の動きと傾向を視覚化して把握できる。確定していない予定は後で消せるよう鉛筆で記入し、確定後に色分け

年間プランニングページ : 占星術の結果をメモして、1年間のモチベーションをアップ

篠原幸子さんのEDiT 1日1ページ手帳 年間プランニングページ

① 年末年始には必ずチェックする占星術。占い師、しいたけさんの星読みは青、石井ゆかりさんは赤と色分けして書き込んでいる

② 星読みの中でも特に心に響いたり、とどめて過ごしたいと思ったりしたことを記入

③ 年間ビジョン欄と同様に、ここにはしいたけさんと石井ゆかりさんの月ごとの星読み、そして月ごとの大きなイベントを記入。ハートを付けた部分は、運気が高まる期間

オフィスは京町家
場所で気持ちを切り替える

ホームズビーのオフィスは、築80年の長屋町家。織物工場が軒を連ねる西陣地区、京都らしい佇まいの路地奥の一室です。ただ、仕事場所は自由に選べるので、このオフィスと自宅のほか、ミーティングなどには、ホームズビーが会員になっている別のコミュニティースペースも使います。

町家オフィスは京都らしい和の空間。本棚には対人関係やまちづくりに関連した雑誌や本が並ぶ

町家オフィスは京都らしい和の空間。本棚には対人関係やまちづくりに関連した雑誌や本が並ぶ

「一般の会社勤めとは異なり、出勤義務はありません。オフィスに来るのは、ここにある資料や書類が必要なときだったり、人と会うときだったり。企画やプログラムを考える仕事は、自宅でリモートワークすることが多いですね。ときにはカフェに行くこともあります。メリハリをつけたいときに、場所を変えて時間を区切り、気持ちも切り替えています」

対話の力で
善悪二元論を超えて

「いま、いろんな価値観がある世の中で、多数決に頼らず合意形成をしていく、そういう社会システムの在り方の根本に、対話のスキルがあると思うんです。この対話の文化が、企業でも町でも、いろんなところで起きたらいいなと思っていて。多様性を認めることは現実問題としてなかなか難しい。でも私は、いっしょにやっていくことを諦めたくないし、自分で行動する人が増えるといいなと思います。対話する人がマイノリティーでなくなるといいなと」

報道やニュースを見ても、ウェブやSNSを見ても、自分と異なる意見に対するバッシングの強さや、排他的な傾向が強まっているように感じると篠原さんは言います。

「たとえば原発問題にしても、賛成派と反対派は同じ強さで批判しあっているけれど、原発はあくまで手段。エネルギー獲得方法のひとつのはずです。みんなが実現したい社会や未来の姿を考えたら、落とし所のようなものは見えるんじゃないでしょうか。時間はかかるし大変だろうけど、そこに賭けたほうがいい気がしています。いいとか悪いとか、正義とか悪とか、二元論じゃない世界にいった方がいいんじゃないかと思ってるんですね。実は私自身はどうしても良し悪しで考えてしまうクセがあるんですが、そうじゃない見方をしていきたいし、それが世の中の当たり前になったらいいなと、とても思っています」

町家が連なる道を背景に佇む篠原幸子さん

取材中、対話の文化を「広めたい」、人に何かを「させたい」とは一度も言わなかった篠原さん。「広めたい」ではなく「広まるといい」、「させたい」ではなく「なるといい」という言葉の遣い方に、ファシリテーターとして「変化が生まれるきっかけをつくることがスタンス」という篠原さんの、どんなに時間がかかっても人をコントロールしない、人や社会の自発的な変化を待つんだという強い思いがあらわれているようでした。

町家のオフィスでEDiTを片手にほほえむ篠原幸子さん
篠原幸子 Sachiko Shinohara
ファシリテーター

NPO法人 場とつながりラボhome’s vi(ホームズ・ビー)理事。京都在住。行政や企業で「関係性の構築」を大切にしながら、組織や地域の当事者がありたい未来を描き、自ら未来を実現するアイディアを生み出し、実現していくための場づくりに取り組む。釜石〇〇(まるまる)会議、大阪LGBT100人会議、山科子ども・若者未来トーク、京都ちーびずマルシェ、など、京都を拠点に全国へ展開。ワークショップ型のコミュニケーション研修、「ティール型組織」を目指す組織改革のサポートなど、分野や手法にとらわれずおこなっている。NPO法人 京都子どもセンター副理事長。

場とつながりラボhome’s vi(ホームズ・ビー):homes-vi.org